DATA: 2009/12/5, EOS 5D Mark II, EF24-105mm F4L IS USM
12月上旬の 2日間、芦生原生林に生息するシカ (ニホンジカ、カモシカ) の個体数調査とシカ防除柵のネット外しに参加しました。個体数調査は、芦生原生林を管理する京都大学により毎年実施されており、今回が 8回目になります。個体数調査からシカの個体数密度を推定して、将来の適正な生息数の割り出しなどが行われます。また、シカ防除柵は、上谷の支流のひとつである A谷の集水域全域 16haを囲む大規模なものであり、シカの食害により荒廃した森林が、シカを排除することで、植物や昆虫の多様性を取り戻せるかどうかを調べるための実験です。
芦生原生林を後世に残すことに繋がる研究に協力したいという思いと、野生動物の個体数調査への科学的な関心もあって、今回初めて参加させていただきました。僕以外の一般参加者は、『
芦生短信』 ブログの福本さん、10月の芦生観察会に参加されたレモンさん、Tさん、『
ココロ』 の片ちゃんです。風雨の中での慣れない調査に苦戦することもありましたが、研究者や学生の方々、そして、一般参加者たちと、調査活動のみならず、寝食を共にできた、内容の濃い 2日間でした。
【1日目 午前】
京都大学農学部構内に 6:30集合。調査団は複数台の車に分乗して、地蔵峠経由で長治谷広場まで移動。ここで須後側から入林したメンバとも合流。調査団は総勢 40名。到着時から、やや強い雨が降っており、全員レインウェアを着用。作業小屋の前で調査方法の説明を受けました (1枚目)。
区画法は、100ha程度の調査地を幾つかの小区画に区切り、各区画に 1~2名の調査者を割り当て、全区画を一斉に踏査して、目撃されたシカの個体数から、調査地の個体数密度を推定する方法です。
午前の調査地である中山神社方面までは徒歩で移動。中山神社の裏尾根を登り、各ペアが担当区画の最高標高点で待機。
DATA: 2009/12/5, EOS 5D Mark II, EF24-105mm F4L IS USM
風雨の強まる中、トランシーバーからの合図とともに一斉に調査開始。谷の両斜面をジグザグに降りながら、シカを探しました。調査経験者と未経験者のペアであり、僕は読図と山歩きのスキルを期待されていたのですが、僕のほうが斜面を 5mほど滑落してしまいました。悪戦苦闘の末、担当エリアの終点に到着。僕たちの担当区画ではシカの目撃数ゼロでした。
ペアを組んだ男子学生 Mさんは眼鏡が曇るからと、雨の中でもレインウェアのフードを被らなかったけれど、シャツまで濡らしてしまったようでした。後で風邪など引かなかったでしょうか?
DATA: 2009/12/5, EOS 5D Mark II, EF24-105mm F4L IS USM
長治谷広場の作業小屋に戻り、調査結果の報告を済ませてから、昼食タイム。
【1日目 午後】
午後は午前とは異なる調査地まで車で移動。
DATA: 2009/12/5, EOS 5D Mark II, EF24-105mm F4L IS USM
再び尾根伝いに登りました。
DATA: 2009/12/5, EOS 5D Mark II, EF24-105mm F4L IS USM
各ペアが担当区画の最高標高点に配置完了。
DATA: 2009/12/5, EOS 5D Mark II, EF24-105mm F4L IS USM
トランシーバーからの合図と共に、斜面を降りて行きます。雨が止んでくれたお陰で、地形図を頻繁に確認できます。適切なルートを選びながら下ったのですが、地形図上では緩斜面に見えた谷が、実際には歩行できそうにない急傾斜のために、谷の横断に難儀させられました。それでも、怪我なく無事に終点の林道に辿り着き、一安心。僕とペアを組んだのは 3回生の女子学生 Hさんだったのですが、悪路でも弱音ひとつ言わず歩き通してくれたのには感心させられました。結局、午後の調査でもシカの目撃数はゼロでした。
1日目の調査を終えて、車で須後の宿舎に移動。
僕たち一般参加者は、宿舎の別館に割り当てられました。中に入ると、床の上に大量のカメムシが這い回っていたので、カメムシ様御一行をペットボトルに強制チェックイン。
DATA: 2009/12/5, EOS 5D Mark II, EF24-105mm F4L IS USM
夕食は本館の食堂で、鍋料理とビール、日本酒を味わいながら、皆さんと語り合いました。
DATA: 2009/12/5, EOS 5D Mark II, EF24-105mm F4L IS USM
食後は入浴タイム。宿舎の風呂場は広めで快適。湯船でゆったり温まりました。入浴後は食堂で、京大OBの研究者や 10月の芦生観察会に参加された方たちと芦生や野生動物の生態について、楽しく語り合いました。消灯&就寝は 23:00頃だったかな? なお、宿舎の快適度ですが、一般参加のTさんの感想では、一昔前の山小屋やユースホステルに比べると、格段に良いとのことでした。
【2日目 午前】
6:30から朝食。朝食後は宿舎の後片付け。8:00に宿舎前に全員集合。
DATA: 2009/12/6, EOS 5D Mark II, EF24-105mm F4L IS USM
車で1日目午後と同じ調査地に移動して、トランシーバ、記録票など一式を受け取り、担当区画まで尾根を登りました。
DATA: 2009/12/6, EOS 5D Mark II, EF24-105mm F4L IS USM
昨日と同じ女子学生 Hさんとペアになり、前日と同じルートを歩き、無事に調査終了。発見できたのはシカ糞のみ。晩秋以降、餌がなくなり、シカたちはどこか別の山域に移動してしまったのかも?
長治谷広場に戻り、調査結果を報告して、広場で昼食タイム。
DATA: 2009/12/6, EOS 5D Mark II, EF24-105mm F4L IS USM
【2日目 午後】
午後からの作業は、上谷の支流である A谷全体を囲ったシカ防除柵のネットを外して、紐で括る作業です。
DATA: 2009/12/6, EOS 5D Mark II, EF24-105mm F4L IS USM
これはネットが雪崩に押し流されないようにするためです。作業者は 2グループに分かれて、それぞれ A谷の東側と西側のネット外しを担当します。終了時刻を予定よりも少しオーバーしましたが、全周囲を完了。
DATA: 2009/12/6, EOS 5D Mark II, EF24-105mm F4L IS USM
ネットが外された A谷の谷底です。ネットの外側よりもシダ類など、下層植生が多様になっていました。
DATA: 2009/12/6, EOS 5D Mark II, EF24-105mm F4L IS USM
作業を終えて、長治谷広場まで戻りました。
DATA: 2009/12/6, EOS 5D Mark II, EF24-105mm F4L IS USM
長治谷作業小屋の戸締りを済ませてから、須後の宿舎まで下山。宿舎の片付け&戸締りを終えて、現地解散。僕の車で、女子学生さん 2名を京大までお送りしました。
【振り返り】
今回経験した区画法は、人海戦術と言えるものであり、晩秋に行うことで見通しが良く、対象動物の見落とし/見逃しのリスクは少なくなります。その一方で、年 1回の定点観測では、観測日の天候の影響や、シカの季節移動により、個体数の増減が把握できないという弱点もありそうです。例えば、積雪前の初冬では、シカたちはより多くの餌を求めて高地から低地に移動していたかも知れません。
本調査を行っている研究室では、毎年、準備から終了までの事務的なコーディネート役を 4回生が担当して、先輩たちがサポーターをされるそうです。今年は女子学生がコーディネーターに任命されてましたが、元気よく頑張られてました。若い学生さんにプロジェクト運営を経験させていることに感心させられました。
今回、僕たちのような山歩きの経験者 (スキルにばらつきはありますが) が参加して、学生さんとペアを組むことで、調査中の事故防止に多少の貢献はできたのかなと思っています。
関係者の皆様、お世話になり、ありがとうございました。気ままな山歩きとは違う、非常に良い多くの刺激をいただきました。時間と体力さえあれば、来年の調査にも参加したいと思います。
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